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藤裏葉8
続きです。
〔本文〕
わが御方〔かた〕にて、心つかひいみじう化粧〔けさう〕じて、たそかれも過ぎ、心やましきほどに詣〔まう〕で給〔たま〕へり。主人〔あるじ〕の君達〔きんみたち〕、中将をはじめて、七八人うち連れて迎ヘ入れ奉〔たてまつ〕る。いづれとなくをかしき容貌〔かたち〕どもなれど、なほ、人にすぐれて、あざやかにきよらなるものから、なつかしう、よしづき、恥づかしげなり。
大臣〔おとど〕、御座〔おまし〕ひきつくろはせなどし給ふ御用意、おろかならず。御冠〔かうぶり〕などし給ひて、出〔い〕で給ふとて、北の方、若き女房などに、「覗きて見給へ。いと警策〔かうざく〕にねびまさる人なり。用意などいと静かに、ものものしや。あざやかに抜け出でおよすけたる方は、父大臣にもまさりざまにこそあめれ。
〔大意〕
夕霧は自分の部屋で、気配りをしてたいそう着飾り、夕暮れ時も過ぎ、気を揉む頃に参上なさった。主人側の君たち、中将をはじめとして、七八人連れ立って夕霧を迎え入れ申し上げる。誰がということもなく美しい顔立ちであるけれども、やはり、夕霧は他の人よりは優れて、際立って美しいけれども、感じよく、奥ゆかしく、立派な様子である。
内大臣が、座席を用意させなどしなさる心遣いは、並一通りではない。冠などをお着けになって、お出ましになるということで、北の方や若い女房たちに、「のぞいて御覧なさい。とても成長するにつれてますます優秀におなりになる人である。心遣いなどもとても落ち着いていて、重々しい。はっきりと群を抜いて成長なさっているところは、父大臣〔:源氏の君〕よりも優れているのであるようだ。
〔解説〕
夕霧はほいほいとは出掛けません。相手がまだかまだかと気を揉むころに到着しました。源氏の君も、遥か昔の〔花宴10〕で「御装ひなどひきつくろひ給ひて、いたう暮るるほどに、待たれてぞ渡り給ふ」ということをしていました。当時の右大臣邸で藤の花の宴が開かれて源氏の君が招待されました。源氏の君はここで朧月夜の君を探し当てるのですが、設定がとてもよく似ていますね。(^_^;
内大臣が「御冠などし給ひて」というのは、いわゆる衣冠束帯というスタイルなので、正装です。普段は直衣姿で、烏帽子を着用しています。内大臣も気合いが入っています。