流動分散による確保支点の検討

確保支点(アンカー)の作成方法は大別すると、

  1. 各支点に個別に接続する方法と
  2. 一本のシュリンゲで流動分散によって接続する方法がある。
    以下にその特徴について整理し、百丈やぐらにてテストを行い問題点を検討した。
  3.  

1.検討モデル

  1.  資料−1の様に、2個の固定支点をつなぎ合わせ確保支点を作成する単純なものとする。
  2.  確保は、トップが制度確保の出来ない自動ブロック式確保器を用いセカンドを確保するものとする。
  3.  

2.均等加重と調芯性

  1. 実例より
     資料−1の図−1は、2個の固定支点を個々のシュリンゲで接続したもの。
    この場合、両支点を有効に利かせるために”ア”の位置で”A”、”B”各支点ピンから中央確保カラビナまでの距離を決める。
    しかしながらクライマーが”イ”位置で落ちた場合、確保点の鉛直方向に向かうため振られる事により支点”B”にのみ墜落加重が作用する。
     図−2は、2個の固定支点を流動分散のシュリンゲで接続したもの。
    この場合、中央確保カラビナ位置を調芯させることにより、”A”、”B”支点の両方に加重がほぼ均等にかかる様にすることが出来る。
    つまり、”イ”位置での墜落を想定して中央確保カラビナ位置を鉛直方向に修正する事により、両支点に加重がほぼ均等に作用する。
    流動分散で調芯した後、中央カラビナ部でシュリンゲを結んでしまう方法も使われているようだが、”イ”位置での墜落では調芯の効果がない。
     以上より、流動分散支点のほうが1本の支点ピンに作用する力を小さくできる事が解る。
    資料−1の図
  2. 静的バランスより
     資料−2”イ”は、個別シュリンゲ支点と流動分散支点で、ザイル加重100の時”A”、”B”支点ピンはいくらの強度が必要か記述したもの。
    個別シュリンゲ支点の場合は流動分散支点に比べ、2倍の強度が必要なことが解る。
    個別シュリンゲでほぼ均等加重にすることは出来なくはないが、加重方向が変化すれば対応しにくい。
    資料−2の図
  3.  

3.流動分散支点の問題点

  1.  力がかかった状態で加重方向が変化したときの調芯は、中央確保カラビナ部でシュリンゲが摩擦し合うので調芯しにくくまた、均等加重にもなりにくい(図−3のテスト結果、および岳連:松本氏の実験による)。
     この場合上記のようにあらかじめ中央確保カラビナ位置を、鉛直方向に修正する事により解決できる。 図−3
  2.  資料−2流動分散確保支点の”ロ”図で、”A”支点が弱くて先に抜けてしまった場合、流動分散であるがため中央カラビナ部が”A”支点から中央カラビナ距離分落下し”B”支点に衝撃力を与えないか?
     また、その大きさはどの程度か?
  3.  

4.テスト内容の概要

5.測定結果

  1.  片側抜け後の残り支点には、大きな衝撃力は発生しなかった。残り支点加重は、最大でも抜けない時の加重値の2倍程度。
    (静かに切り離された場合、残り支点に加重が移っても2倍になるのに、動的には2倍以下となった。)
  2.  片側が弱いほど残り支点に作用する加重は大きくなった。−−− 以上は資料−4参照
  3.  ザイル長さが2mの場合、片側支点抜けによる落下距離と残り支点加重の関係は、落下距離が0.1mより0.3mの
     ほうが小さくなり、0.53mになると大きくなった。−−− 資料−4、5.2参照
  4.  

資料−4の図

資料−5.1の図

資料−5.2の図


6.考察

下図

 最近の岩場では、確保支点に杭のような頑丈なアンカーを埋めたのが多く見られ、その1本とバックアップでも充分な強度が得られそれほど神経質にならなくても良いようである。
 しかしながら、昔ながらのハーケンやリングボルトの確保点、またナッツやカムで確保支点を作成する場合はもちろんのこと、たとえ前記のような支点であっても、完全は無いものと考え、必ず支点の確認を行って強度の高い確保支点を作りたいものである。
 クライマー本人とパートナーのために。

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