2004/06/05第7回 Res: もの研究会

インターメッツォ
あるコレクターの独白

発表者: 上垣 幸徳


はぁ、中世の宇治幻想博物館のコレクションとはなかなか・・・。ええっと、次の展示室は向こうだな。ふーん、次の展示室まではつなぎの空間があるのか。おや、ここにも展示が有る。空きスペースの有効利用というやつですか。さしずめ、歌劇の間奏曲といったところだな。陳列品は個人コレクションか。場所ふさぎには安直に思いつく良くあるパターンだね。あらあら、今日は珍しく所有者らしき人物がきてぶつぶつなにかをつぶやいているじゃないか。次の展示室が空くまでまだ時間があることだし、ちょいと眺めていくことにするか。

コレクションのおおまかな紹介

現物を目の前にしているのだから、一目瞭然、説明の必要無し、とも考えたが、興味ない人(特に司会者)からは、「なんだ樹脂の固まりじゃん」とも言われかねないので、今日並んでいる収集品について簡単な説明をしておこう(写真は上垣氏持参のものと同種の模型)

その1.模型類

収集品として持参したものは、同一縮尺の戦車(およびその類の戦闘用車両)・飛行機・艦船の模型で、この他には所謂「フィギュア」と呼ばれる食玩類も模型類に含まれる。ただし、「収集品」と本人が認識しているのはあくまでも完成品のみであり、一般市場に流通し、商品として取り扱われている「キット」は「収集品」としては認めない。持参したものは縮尺が小さいためか、それぞれに細部の違いは明らかにあるが、全体としては統一感のあるものとなっている。個々の収集品の来歴についてはわずかの例外を除いて所有者自らの購入および製作による物である(写真提供:中谷礼仁氏)

その2.ラリー関係の商品

自動車ラリーの開催に関わって製作された物品の一群。衣類、大小の自動車模型、ピンバッチなどの雑貨類・使用済みのチケット・関連出版物他、物品の形態はさまざま。ただし、個々の物品それぞれが持つ価値は収集した当人には大きさの大小・形状の違いに関わらず等価である。個々の収集品の来歴についてはその1と同じくほとんどが所有者自らの購入および製作による物であるが、一部人的交流の中で譲られた物もある(写真手前が模型類、奥がラリー関係 / 写真提供:中谷礼仁氏)

収集の目的と収集対象の選択、
そして収集家本人による若干の見解

上記の収集品の一群は興味をそそられる「イメージ」を身近に留めておきたいという曖昧な目的のために、「イメージ」を想起させる「もの」を集積した結果、成立したものである。ただし、一部には収集の具体的目的を掲げられなくないものもある。例えば、一部の1/700スケールの艦船模型に関しては「1941年12月8日時点の旧日本海軍連合艦隊を再現する」という目的で集められたものである。しかしながら、上記目的はやっぱり艦船に対する興味がその出発点であるのは明白であるから、結局上記の「イメージを留める」以外に目的が思いつかなくなってしまった。

収集の対象として上記の物品が選ばれた理由だが、これは単純に物理的理由と経済的理由を提示できる。物理的理由とは、「イメージ」を生起させる一次的な物品が消滅していることと収集品を納めるスペースが限られていることで、経済的理由とは収集につぎ込む資金に限りがあることである。具体的に記せば、「戦艦大和」の現物はもはや九州と沖縄の間の海底にばらばらに破壊されて散らばっているし、私の所有する家屋のどこにも数万トンもの艦船をいくつも置くスペースがないのである。また、ギリシアで海運王のように気安く何台も数千万円もするラリーカーを買う財力は私にはない。できる限りで、「イメージ」を生起させる一次的な物品を中心に所有欲が生起するのだが、できない場合は代替品として上記のものを買い集めたり、購入品を取捨選択したりしているのである。

収集の原動力となる「イメージ」には極めて単純ながら「戦車・軍艦=かっこいい」、「ラリー=かっこいい」というような図式で示せるものや、「精密にできたもの」の様に自分でも興味をそそられる理由をよく説明できないものもある。ただ、それらの「イメージ」そのものは本来、人間の思考活動によって作られ、実体化されないものである。しかも、しばしば「忘却」することで作りあげた「イメージ」があやふやなものになっていく。だが、いろいろな形で人間は情報を蓄積していく。私の場合、イメージができてしまうと、そのイメージを損なうことを恐れて、関連物品を「情報記憶装置」として機能させようとしているのかもしれない。それが故に、興味をそそられたいろいろなものを「ある有限の一群としてまとめられる」と規定し、それが可能であるかないかは問題とせず、物品全てを集めたくなってしまうし、商品カタログにしばしば掲載される「○○シリーズ全商品」といったような写真に羨望の眼差しを向けてしまうのだろう。

ふむふむ、うーん、回廊はここにて終わりで、展示もここで終わりだね。ぶつぶつ語りはねぇ。ただ単に好き、ということを回りくどく言っているだけのような・・・。そういえば宮崎駿は模型雑誌に「戦車が強そうとかカッコイイから好きなんてのはな ただの無知のせいだ 初歩だ カケダシダ」なんて書いていたなぁ。なんか単に自分の行為を正当化しようとしているだけのような気もするけど、なんだかなあ。おっと、次の展示室「珍蔵秘玩集古二道」の扉が開く時間だ。そっちへ移動、移動、移動・・・

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