2003/01/19 第3回 Res: もの研究会 「ものとしての装飾」

装飾/文様 −その近代研究史における意味づけと「表象」
History/Story of Art Historical Studies on Ornaments and Representation

発表者: 鶴岡 真弓

  1. Ornaments & Decoration
  2. Ornaments and politics
  3. Art History as Humanities: Studies on History of Ornament; Classical Art v.s. Non-classical
  4. Ornamentalism in the Celtic Art: Ornament on/ in/ into the Object
  5. Representation
  6. Three connotative phases of image

以下は、第3回研究会での鶴岡氏の研究発表の概要です。基本的には、全て当日の配布資料をそのままHTML化したものです(図版は省略しました)。また、鶴岡氏の目次は 0. 〜5. の章立てでしたが、web技術上、1. 〜 6. に置き換えさせていただきました。
なお、この発表に対して、佐藤啓介氏が「製作のユートピア、あるいは、ユートピアの製作」と題したコメントを公開しています。

1. Ornaments & Decoration

  1. オーナメント=文様・意匠・装飾
    • ornament ← ornare, ornatus ← kosmos → cosmetic
    • decoration
    • 装備する 調える
  2. 装飾
    • 「飾」 《食+人・巾で拭う》 の象形
  3. 聖書 神の装飾、不信心者の虚飾(「飾る」こと=倫理)

■ 2. Ornaments and politics

  • オーエン・ジョーンズ『装飾の文法』 1856、ロンドン
  • 大英帝国の「世界性」を意味づけるための、文様エンサイクロペディアの側面
  • 幾何学=秩序・調和美の起源と類縁(ギリシア文様とアラベスク文様)

■ 3. ウィーン学派

  • 技術発展史としての美術史 ゼンパー
  • 精神史としての美術史
    • リーグル『様式論』 変遷史(ギリシア−ペルシア−ローマ−中世ローマ)
    • ヴォリンガー『抽象と感情移入』(古典・北方・東方・未開を対等にみる)
      • 北方の文様 「不安な生命」「ゴシック建築」「森の民」「ゲルマン精神」

■ 4. ケルト美術のオーナメンタリズム

  • 紀元前5世紀から紀元後9世紀初頭まで
  • 金工・石・羊皮紙の美術に「文様」美術を展開
  • 「ゲネシスなき美術」(ヤコブスタール『初期ケルト美術』 1944、ロンドン)
  • なかでも「渦巻」「組紐」「動物」文様を駆使
  • 初期中世ヨーロッパの写本の最高傑作『ケルズの書』 c. 800
  • 「文様」なくして「ケルト美術」はない

「文様」+「本体」ではなく、「文様」×「支持体」の有機的接続

■ 5. 表象

【管理人より】
発表資料より、主要な部分のみを抜粋させていただきました。

  1. 表象の三項関係
    • 何らかの事物・事柄の「存在」 → 心的な表象の存在 → 実際の表象
    • 何らかの事物・事柄への認識 ← 心的な表象への接触 ← 実際的な表象の製作
  2. 表象の定義=「表象」は「志向性への兆候−痕跡」である
    • 絵画や図像は、「なにか既に実在する事物」の、完全な「代わり」や「写し」なのではない。そこに実際的に現された表象は「実際の事物」を契機に促された、人間の「認識や意識による志向」をささやかに告げているものに過ぎない。しかしこの「告げている」ことが、わたしたちが「世界」にたいして、ほかでもない、いまここで「志向」しはじめましたということの「兆候」であり、「痕跡」なのである
    • 言語のおこなう「対象指示性」を、そのまま、イメージ表現のおこなう「対象指示性」に、使用することはできない。なぜなら、イメージ表現は、まさに(言語によっては思い切って名づけられてしまう)「それ」をあくまで最終的には「名づけない」「名づけえない」対象として、むしろ半-対象化しつつ、半-非対象化するのだから。
    • 「... 『指示対象が〜として表象される」という『〜として』構造が、表象の発生する根源に存在している ...」(佐藤啓介「「表象」の基礎構造について」より引用)。この「として」が、「対象と接触しながら、対象と密着しない」かたちでしか現れることのない「表象のあり方を示している。

■ 6. イメージの3層

  1. 自然的意味
  2. 文化的(特殊的)意味 (その文化内のコードによって解釈される意味価値)
  3. 一般的(普遍的)意味 (一定の文化内的意味から開放された、人間一般に印象深い意味価値)
  • 例 「聖母マリア」像
    1. 女性が赤ん坊を抱いている
    2. 聖処女マリアが、神の子キリストを、抱いている
    3. 母なるもの 母と子の絆

とすれば、「文様」もまた、この3層イメージの「複合性」のなかで、製作され、残され、解釈の俎上にのせられる、芸術的表象である

  • 中世ケルト系装飾写本の「渦巻文様」
    1. 複雑な渦が連鎖する形態
    2. 約1000年間にわたりケルト美術で表現された伝統的な文様
    3. リゾーム的な自-他増殖的形態

■ 結論にかえて

  1. 「文」をめぐる観念
    • 中国
      • 天文
      • 人文
    • キリスト教西洋
      • 神のオルナートゥス
      • 神に導かれる人の装/飾
  2. 文様
    • 「あや」=kosmos=カオスにオーダーのしるしをつけていく。
    • しかし、ロゴス未満。ロゴスとミュトスの間にとどまり、世界へアプローチする。それを視覚的に表したもの。
  3. 装飾・文様は、表層にとどまる(たとえ立体的なものであれ)
    • それによって、つねにその「本体」や「支持体」の「存在」に、「変化」「編成」「更新」を、視覚的に迫る造形的要素としてある。
  • 図像や文様を、どの意味価値において、記述するか
    • 数学・幾何学的(数字によって)にか
    • 考古学的(品質的)にか
    • 美術史的(様式史的・図像解釈学的・社会芸術学的)にか
    • 美学的(審美的概念的)にか
    • 現代思想的(批評的)にか
  • それぞれの学範によって、異なる、多様な意味価値を抽出し、総合的・有機的解釈の可能性/不可能性を提示していくことの重要性。

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