
竣工写真をご覧頂きながら、東京都文京区本駒込の正太駒込マンション リニューアル設計監理主旨について述べさせて頂きます。
JR山手線駒込駅から徒歩5分圏内にあり、不忍通り沿いに立地しています。64世帯12階建て満室稼動中、築43年賃貸集合住宅の外装リニューアル・グレードアップ計画です。
スクラップ&ビルドから脱却し、既存のものを生かしながら社会的な公共の利となる様、お施主様から啓示頂きました、オーナーよし、テナントよし、地域よしの近江商人の経営理念に由来する『三方良し』の精神でどれだけ再生できるかにチャレンジしました。
共用廊下コンクリート手すり壁は、静音解体工事を行い軽量化することで、総量93.4t軽量化しました。これは12階部分の柱・梁・壁躯体(106t)の減築に相当する耐震性向上を果たしています。
本計画の着工前から完成までの流れを290枚の工事写真でご説明させて頂いております。是非ご覧下さい。↓

既存外壁は2種類のタイル貼りで貼り付けモルタルと躯体面に隙間が生じ、剥落の危険がありました。
また、アルミ手摺は後付け改修が以前に行われておりましたが、躯体への取り付けが不十分であったためか、バルコニー躯体手摺との取合い部でアルミカバーをかぶせて手摺の取り付け強度を補っていました。
お施主様から要望頂きました、外装リニューアルの課題として、空室率改善/既存外壁タイル剥落の危険の除去が上げられました。
外壁をただ43年前の新築時のきれいな状態に戻すのではなく、現在の集合住宅の価値に近づけて近隣集合集宅と競合できるようリニューアルすることです。
最近はマンションリフォームにおける改修が盛んでありますが、ほとんどは設備・構造等の機能修繕に外壁やエントランスの美装工事が行われる程度です。
本プロジェクトでは機能修繕と共に魅力づけによる不動産価値の創造を図ることがお施主様よりの課題とされました。
正太駒込マンションを、いわゆるデザイナーズマンションとしてリニューアルすることで、都心に住みながら都心の利便性を享受し、この地で快適に暮らしたいと思う従前からの居住者、リニューアルを契機とした入居者を想定して設計デザインを行いました。
また、文京区という立地特性上、教育機関や医療施設等に勤務する知識層や六義園、大和郷に代表される地域への愛着、生活圏をコンパクトにし、車社会からの回避など環境配慮志向の入居者を想定しています。
JR駒込駅からこのマンションに徒歩で来るとき一番最初に目に飛び込んでくるマンションの形がこの共用廊下アルミパネルのファサードとなります。
そのため、この方向からのマンションリニューアルはとても注力して設計しています。
サブエントランスの庇は新設したものです。自動ドア引き込み代が既存プランの関係で内部に設けることが出来ませんでしたので外エンジン方式を採用しています。
外エンジンですと外壁をつたう雨がエンジンにかかるため庇が必要でした。庇の新設に際しては、文京区建築指導課の指導を受けながら決定しています。
今回プロジェクトでは確認申請を必要とする面積の変更・建物重量増とならないよう配慮しています。建築面積の変更の対象とならないよう庇の出を1mとして算入しないようにしています。
また、引き込み部のデザインを1階部分の共通デザインであるアルミパイプルーバーとすることで面が異なっても連続した関係性を保つことで壁としての一体感を出して自動ドアの存在感を抽象化するよう配慮しています。
鉄骨ウィングフレームのエンドについたてとしてステンレスヘアーライン折板の壁を設けています。白いパンチングメタルプレートは携帯電話会社のアンテナ配線を隠しています。
これまで以上に快適な外装をまとい生活の集合した姿としたいと考えました。街並みに対して12階建て64世帯のボリュームは、近くを通る時、圧倒される見上げる壁面となります。
特にエレベーター階段シャフトが敷地境界に面してそり立っています。歩道通り沿いの雰囲気を和らげるため、平屋の軒先ラインを記号化した鉄骨水平フレームラインを敷地境界に沿って設けることで歩道を歩く人への親近感あるスケールへ変換するデザインを施しています。
1960年代の高度経済成長期に建設された建物で老朽化が進み、大規模修繕が必要となっていいました。居住者を退去させると家賃収入が途絶える為、大規模修繕・改築が行えない経済状況下にあるこのような賃貸マンションは、競争力を失い空室率が悪化し、家賃収入が減少していく傾向にあります。
今回のプロジェクトでは、スクラップ&ビルドによる環境負荷の大きい建替え工事とは異なる方法で、満室稼働中の居住者の退去を行うことなくリニューアルを行うことが目標とされました。
サブエントランスは本磨き黒御影石とアルミルーバーでるばーのシルバーの輝きと本御影の光の対比が生まれるようにしています。夜には黒御影石にあるLEDサインが光り黒い御影石の中で赤い光を放つようデザインを施しています
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床タイルにつきましては既存では水道飛び込み口のマンホールがステップ面にかかっていましたが、上水引き込み口をエントランス側から逆法方向に回すことで上水引き込みマンホールがふようとなるようにしています。
既存ではステップを設けられない中で段差が生じていましたが、2段のゆるいステップを設けてアプローチを向上しています。
新築マンションと異なる点として、何十年か前に誰かが設計したものを、現在の設計で補おうとする行為だととらえることができます。そのため、既存の状態を良く知る必要があります。
例えば竣工当時の設計図書などを手がかりに現地を見て設計図の通りか追っていきます。しかし、設計図だけでは当然ですが見えないものが沢山あります。
一般の方は設計図には何でも書いてあるとお思いでしょうが、設計図は新築工事を職人が工事するために必要な方針が書かれているのであって施工の段取りや施工方法施工位置などの詳細なものは記されていないのです。
施工の段取りは工事施工要領書やどこにどれだけの深さで配管を埋めたのかなどの埋設配管は施工図などになります。しかし、そこまで詳細に図面を作り保管することは現在の建築実情からすると現実的ではない行為です。そうなりますと、推察できる範囲でしかわかりません。
この推察できる能力が改修設計にはとても重要になることが今回の設計で痛感したことです。特に設備設計は意匠設計者が理解できる範囲ではカバーするのが非常に困難です。
設備でも電気・給排水衛生が複雑に絡むので、それぞれの設計者がいれば良いですが、工事監理者で電気・衛生設備の設計者が現場に出向いてその都度判断すると言うことは工事費が何十億もするプロジェクトでなければありえません。
施工者側の電気・設備施工者の意見を聞くことがとても重要になりますが、設計者ではなく施工者なわけですから法令の理解度がどの程度かによってその判断が本当に正しいのかわからなくなり設備設計の理解が浅ければ電気・衛生施工者に判断を依存するようになり決定できなくなります。
その意味で、建築基準法や消防法など建築設備関係法令を理解し何が基準としてあるのか、どうすることが法令の基準としてあるのかを理解した上で、何がお施主様の求める工事なのかを設計監理者として見極めることが重要になると考えます。
この上水経路埋設ルートなどは工事に入ってから問題となった点でした。当初の設計ではステップを設けますがマンホールがメンテナンスでまたげるよう置き敷きのステップのディテールで設計していました。
ここは現場設計変更した部分になります。何もかも見通して改修設計することは出来ないので、新築工事とは異なり、不測の事態に備えて工事費とは別に予備費のような余裕が必要だと思います。
それができない場合、工事が済んでいない部分のグレードを下げて差額を捻出する必要があります。
アルミルーバーの連続性を最大限確保し水平ラインを強調しながら、基準階よりも繊細な表現を心がけました。その中で最大の障害物となるのが既存設備配管でした。
配管のルートは新築ではないのでデザインコントロールが出来ません。既存のある中で許されたこととしては塗装・ラッキングが限界でありました。デザインコードに乗らない要素を根元から壊して断ち切ることが出来ない既存改修では、隠そうとするどうしても装飾的なデザインになってしまいます。
そこが既存改修の非常に難しいところだと考えています。入居者のいない新築やスケルトン改修とは制約の大きさが桁違いにあります。
その一つ一つは構造や設備、法令が関係するので単なる装飾的なデザインだけで解決しようとすると相当の無駄が生じます。
そのため、片岡直樹設備設計一級建築士事務所では単なる意匠ではなく、統括設計者としてデザイン意匠性のみを価値とするのではなく構造安全性や設備の将来メンテナンス性を考慮してデザイン決定しています。