
片岡直樹設備設計一級建築士事務所のデザインで注力しているポイントやお施主様のお役に立つ建築専門用語の解説などをジャンルに関係なく紹介させて頂いております。
今をときめく池上彰のように、わかりやすい解説を心がけたつもりですが、当然ながら足元にも及びませんのでご容赦下さい。
まだまだ私は構造設計一級建築士の勉強中なのですが、良くお施主様が気にされている用語として、こちらの解説を試みさせて頂きます。
日本では、世界中の1年間の総地震エネルギーの約10%が国土及び周辺の海域で放出されていると言われています。
日本の耐震基準は、文明開化などで、西洋から入ってきたものではなく、地震被害の経験を経て改良されて定められたものです。
よく耐震性の問題として新耐震と旧耐震と言う比較があります。
日本の耐震基準の変遷の中で、ここが大きな分かれ目のひとつです。
新耐震とは、1978年の宮城県沖地震の被害の経験から1981年(昭和56年)6月1日の建築基準法施行令改正で行われました。
(ウィキペディアは1968年の十勝沖地震の被害と書いてありますが、間違えてます。1968年の十勝沖地震の被害での改正は新耐震設計法への移行ではなく、せん断補強の強化を目的とした帯筋ピッチの改正です。)
ものすごく大雑把に言えば、1978年の宮城県沖地震で、今までの基準で設計した建物では、壊れ方を設計していなかったから、柱が折れて落階することで人命が失わる可能性がわかったのです。
一次設計と二次設計を行う概念が持ち込まれ、一次設計で許容応力度計算を行うだけでなく、2次設計で変形から崩壊に至る過程を確認する計算を行い、基準を満たすことを義務付けるようになったのです。
壊れ方とは、全体崩壊系といいまして、変形の仕方を把握して建物の壊れ方として、柱より先に梁が折れて落階の危険が起こらないように設計するようになったのです。
つまり、旧耐震の建物は、宮城県沖地震(マグニチュード7.4震度5死者16人)と同じ地震が来たとき、人命の確保がされていない建物なのです。
『家具の転倒防止で突っ張り棒入れたから大丈夫!』とかいう次元ではなく、震度5で、上の階が落ちてくるかもしれないのですから。旧耐震は危ないのです。
どうして大規模な模様替えで確認申請が1/2以上なのかにつきまして
旧耐震の建物をリニューアルする時の投資目安として基準法の過半の修繕と言うのがひとつのキーワードです。
これ以上やると確認申請を含めて計画が大変になります。
これは、国土交通省の調査で半分以上床や壁や柱・梁を修繕するのであれば、建替えた方が経済的に安いと統計データ根拠があるため、1/3でも1/4でもなく1/2なのだそうです。
耐震改修につきまして
マンションの場合、入居者が大勢いて部屋内の柱梁壁床を補強できないので、一部を行って改善しても、新耐震基準が満たせないので、耐震改修をまったくやらないと言う考え方があると思います。
また、建物のバランス上、ある部屋にはブレース材がバルコニー面に新設されるけど、他の部屋には必要なくて入居者からして見れば差別が生まれることが考えられます。
補強ではなく減築の方が現実的だと思います。
震前補強の考えでは、見えるところだけ、つまり地上部分を補強していますが、根っこである地中梁と杭の補強をしないでどうするのかと思います。
建物は地面の上に建っているのではなく、支持地盤の上に建っているからです。
建物を軽量化して耐震性をUPさせる手法で減築という方法もあります。これのいいところは地中埋設部(杭や地中梁)を補強して強くするのではなく。例えば10階建てを8階建てにして上の階をなくす方法です。
基礎が杭であれば地面に埋まったものは補強できないわけですから上を軽くすることで杭も負担する力が減り耐震性がアップします。
耐震補強の一部の柱の補強では、きちんと構造計算を確認しないとバランスが崩れて応力が集中し、偏芯率に影響を与えてかえって危ないと言うことが考えられますが、軽量化は工学的には、耐震性の改善に純比例的に効果があります。
線引きで基準を満たせないから耐震改修は行わないと考えるのではなく、耐震性が改善されるのであれば、できることはやっておいたほうが工学的に効果があるので、完全ではなくても私は耐震改修を行うことが正しいと考えます。