南アルプス縦走8日間また1つ大人になりました<その1>(2009年8月15〜22日)

南アルプスは無骨で無口だが 本当はいいヤツだ。
と、その個人的な印象を書いた。

北アルプスに比べて、 ボクは南アルプスに好感を抱いていた。
でも、南アルプスには鳳凰三山にしか行ったことがないのである。
それで勝手なことを言ってはいかんだろう。

南アルプスとは何者であるか?
本当に無骨で無口だがいいヤツなのか?
その答えを出すべく、 今年の長期縦走の舞台に南アルプスを選んだのだ。

8月15日(土)1日目
電車を乗り継ぎ身延駅に着いたのは10時20分ころ。 雨畑行きのバスの始発は10時45分なのである。 この時間では、初っ端からビハインドである。
馬場というところでバスを下り、 出発したのが11時30分である。

標高も低いここは快晴の下では暑すぎる。 老平という集落を抜け、 登山計画書のポストのあるゲートに10分でつく。 登山者の姿などあるはずもない。

林道終点には12時13分。
このあと橋が11個(連続したものは1つとカウント)ある。
ほとんどは問題のないものだが、 8つめは丸木を3本束ねたものだけで、 てすりがないのでコワイ。
ここを重荷を担いで歩いて渡るのは危ないので、 四つんばいになって、手を使ってクリア。

で、一番問題なのは「この先最終水場」のすぐあとにある10個目のもの。
橋の手前も足場がナナメってコワイ。 この橋は手すりのない側にナナメっていて、 しかも滑りやすそうな感じ。 その上、最初の手すりは強く引っ張ったら折れてしまいそうで めちゃめちゃビビリます。
もう帰りた〜い・・・

足を滑らさないように、 手すりを壊さないように慎重に渡りきります。
ここはホンマなんとかしてほしい・・・

で、このあと、 渡るはずの川がやってきますが、 最初に河原に下りられるところは渡渉点ではなく、 その先もうちょっと行ったところ。 対岸に登り口が見えますのでわかると思います。

渡渉点は渡れそうな渡れなさそうな微妙なところ。 水量が多いときには無理でしょう。 少し上にも行って渡れないか確かめましたが、 簡単に渡渉できそうなところはありませんでした。

靴を脱いで渡るのも1つの方法ですが、 流れが速いので、それも確実な方法でありません。 結局、ストックをここで出しまして、 慎重に足を伸ばしてストックでバランスをとりながら渡ります。

真ん中くらいの大きな岩はとがっていて足は乗せられなさそうなので、 手とからだを乗っけて、足を移動させて乗り切りました。

なんとか濡らさず、13時33分対岸に渡ることができました。
笊ヶ岳にこちらから登る際の難所はこれで終了です。

ほっと一息。
ここで2日分の水を汲んでいかなければなりません。
で6リットル。
極力軽くしてきたのですが、それでも推定24キロ超のはず。 これを担いで超しんどいところを登らなければなりません。 おにぎりを持つことすらできなかったので、 ここでフリーズドライのごはんに水を入れておいて 1時間後に昼ごはんにしよう、 と思って調味料を入れたところで気がつきます。

これドライカレーやん!

自分のバカバカ!
そら、のど渇くって・・・。

仕方がないので、 腰を落ち着けて湯を沸かして 水があるここで食べることします。

時間を浪費してしまいましたが、 どうせ途中までしか行けないのです。 水をたらふく飲んで14時20分に先に進みます。

ここから急登です。 汗がビックリするくらい、 顔をつたうこともなく、 目の前にポタポタではなく、 ツルツルーっと落ちていきます。

重いし、登りは急だし、 30分登っただけで休憩してしまいます。 で、再び歩きはじめて今度は20分で休憩。 水は飲みたいけれど、 あとのことを考えると節水モードで行かなければなりません。 が、飲まなきゃ苦しいし、軽くもなってくれません。 ホンマのホンマにしんどかったです。

今年は天候不順の影響で 事前のトレーニングがきっちりできなかったのも大きな原因です。

山の神は15時17分に通過。
ワイヤーなどが散乱した地点を16時27分に通過。
本当は檜横手山まで行きたかったが、 体力的にとても無理なのはわかったので、 16時57分、どこかわからない場所で 無理やりスペースを見つけてテントを張りました。

計画では明日は二軒小屋ロッジまで行かなければならないので、 少しでも上に行きたかったのですが、 本当にしんどかったです。

レトルトものを減らしたかったのですが、 よく考えたら、レトルトは水を結構使ってしまいます。
というわけで、泣く泣くフリーズドライのわかめごはんに、 フリーズドライの親子丼をぶっかけたものと、 フリーズドライの豚汁。

寝ようかと思うと下界の花火大会の音が聞こえてくる。 それが終わったころからフライを雨が叩いた。 疲れきっているはずなのに眠れなかった。

8月16日(日)2日目
時計を見たら4時10分。
早出をするつもりだったが、 結局明るくなった5時10分スタート。

一晩寝れば(寝られなかったけど)体力も回復します。
檜横手山は6時17分に通過。 その先の下ったコルで休憩します。

このコース、水場がないことになっているが、 ヤマケイアルペンガイドを立ち読みしたときに、 ここを左側(南側)に下りたところに水場があるという情報が書いてあったのだ。
それを確かめようと見てまわったが、 踏みあともなく、 どれくらいどちらがわに下りたらいいかもわからなかったので、 男らしくきっぱりあきらめた。

どなたか確かめていただけると、 ここを登る人が助かると思います。
ボクは、こんなしんどいところ もう登らないと思いますけど・・・。

ここからもしんどかった。
布引山と書かれた標識のあるなんでもなさそうなところで休憩しますが、 そこは点線ルートとの分岐で、 少し先に本物の展望のある山頂がありました。 でも、悔しいのでスルーします。

その横でテントを張っていたらしいグループが 撤収作業中でした。 この山で初めて人見たよ。

1度下ってから登り返すところで、 おそらく檜横手山にツェルトを張っていた 単独の男性とすれ違い。

お盆の土日の笊ヶ岳で出会った人は 1グループの3人と単独の人だけです。

そして9時50分ころついに笊ヶ岳に到着します。
ついに着いたー!
という喜びはなく、 ただただ疲れきってへたり込みます。

ここまでで5時間登って疲れきっているのに、 まだコースタイムで6時間40分残っています。 水の残りも心配です。
目標だった笊ヶ岳の しかも快晴の展望絶好の山頂について こんなに喜びがわいてこないなんて。

それくらい疲れきり、 先の長さにうんざりでした。

でも、荒川岳から赤石岳、聖岳が 大きくそびえています。 かなりのビューポイントです。

ただ、遠すぎて大きすぎて、 あそこまで行く、 ということが実感をもって感じられません。 今日の行程をこなせるかどうかが問題なのです。

昼ごはん用にフリーズドライの五目ごはんに水を入れておいて、 1時間後に食べることにします。 10時10分に山頂をあとにします。

1時間後の休憩で五目ごはんを食べます。 水節約のために汁物はなしにしたら、 口がパサパサして汁物作ったより、 水をかなり多く消費してしまいます。 体力的にしんどいのに、 精神的にもダメージを受けてしまいます。

生木割山手前の、 地図に「ガレ横断せず上端を歩く」と書いてある箇所ですが、 どうみてもガレのところが上端ですし、 普通に歩きやすそうです。 しかし、そう書いてある以上、 ガレを通らないんだろうと反対側を見ながら歩くと、 樹林帯へ下りる踏み跡があります。

で、そっちに下りると道がついているのですが、 途中から木が覆い被さってきたり、 大変なことになってきます。
これはいかん!
登山道とは思えません。 必死に踏み跡っぽいところを上がって、 ガレに戻ります。

こっちのほうが全然歩きやすいやん!

でも地図にそう書いてあるんだからなあ、 と右側の樹林帯を見ながら歩くと、 踏み跡発見!

こっちだったか。 と思って、そちらに下りていきますが、 しばらく進むとまた道がとんでもないことになってきます。

これも違うやん!

必死に登り返しガレに戻ります。 無駄に体力と精神力を使ってしまいました。

結局、この賽の河原みたいなガレをずっと歩くのが正解で、 最後にえぐれたところに右側に赤テがあって、 そこから右側の樹林帯に入ることになります。 エアリアの地図の書き方、 わかりにくいよ・・・。

生木割山には12時40分に到着。
晴れだからいいようなものの、 まだまだ先は長いです。
天上小屋山には13時35分。
ようやくこれで今日の登りは終了しました。 なんとかメドもたちました。

あとは平行に歩くか下りやからな。 少しでも早く着くため、 ここからは足を速めます。

林道終点には14時45分。
あとは林道かあ。 これでポクポク歩いたら伝付(転付)峠やな。 と思って一休みしてから歩き始めたら、 これが林道とは思えないです。 もう木は生えているわ、 倒木が道をふさいでいるわ、 崩壊して道は崩れているわ。 疲れに火をそそぎます。

伝付(転付)峠分岐には15時25分。 笊ヶ岳からここまですれ違った人は単独の方2人でした。

踏み跡はほぼありますし、 稜線伝いなので迷うポイントは少ないと思いますが、 倒木の乗り越え、くぐり、う回(自分で道をつくる)は普通にありますので、 通常の登山道を思い浮かべていると面食らいます。

水は少し残っていますし、 伝付(転付)峠の水場まで行くのはしんどいので、 そのまま二軒小屋ロッジに下りていきます。 ここは普通の登山道で安心します。

二軒小屋ロッジには16時35分。
ほぼ12時間歩いて到達しました。 久しぶりに人のいるところでホッとしました。

自動販売機でペプシコーラを飲む。
炭酸がうまかった〜。
テントを張ったあと、 トロピカーナオレンジも飲んじゃいます。

夕食は水があるのでS&Bのディナーカレーと 日清焼きそば。

今日も本当にしんどかった。 明日は一番しんどいであろう登りである。 もう明日はダメかもしれん。 とにかくぐっすり寝て疲れをとらなくては。 と思ったが、 こんなに疲れていても眠れなかった。

8月17日(月)3日目
今日もまた2日分、6リットルの水をかついで、 蝙蝠岳に登るのだ。
次のテント場は三伏峠小屋か熊の平小屋までない。 とても今のボクには1日でそんなところまでいけない。 蝙蝠岳を越えたあたりまでが 国立公園外なので、 そこらへんまで登ってテントを張る計画だ。

また節水モードの苦しい登りになるので、 トロピカーナりんごを飲んで、 水をたらふく飲んでから5時43分出発。

小屋の方から千枚岳へのルートを歩くよりも、 林道を歩いてトンネルを通ったほうが速い、 と聞いていたので林道を行きます。

で、トンネル入口のゲート。

なんですかこれ・・・。

ゲートが入口にぴったりくっついて、 すり抜けられません。
うそー・・・。

試してみましたら、 ボク1人がギリギリ通れる程度。 大きなザックは到底通り抜けられません。 といっても、もう戻れんぞ。

ザックだけゲートの上から放り投げようかとも思いましたが、 上までザックを上げられません。

仕方ないので、ザックを持ってゲートのところまできて、 自分だけゲートを通り抜けます。 で、トンネル側から手を伸ばして、 ザックの中身を1つ1つぬいて、 トンネル側に出していきます。 ザックが小さくなったところで、 ザックを強引に引っ張ってゲートをすり抜けさせます。

なんとかトンネルに入れました。 で、もう1度ザックへのパッキングです・・・。

小屋の人、こんなんやったら教えてよ。

一度千枚岳へのルートを登ってから、 トンネルの向こう側に出るルートが正しいと思いますが、 そちらも無駄に登らされますので、 どっちがいいかわかんないなあ。

ちなみにゲートはからだの大きなボクでも 通り抜けられましたので、 ここを登ろうという登山者なら大丈夫ですが、 100キロくらいある人だと、 人だけでも通り抜けられないと思います。 反対側からきた場合は、 通り抜けられなくても、 トンネル分を戻るだけで済みますので、 通り抜けられなくても痛手は小さいでしょう。

トンネルを通り抜け、 しばらく歩きますと登山口の標識があります。 そこから登っていきますが、 いきなり急登です。 地図上の「ロープあり」の地点に6時38分。 ここで1回目の休憩です。
水をごくごく飲みたいところですが、 節水モードですので水を噛むように飲みます。

中部電力の管理棟は7時26分に通過。 コースタイムより少し速めのようです。

この先、わかりやすいランドマークがありませんので、 自分がどこにいるのかわからず苦しいですが、 時計だけを頼りに1歩1歩確実に登っていきます。

1時間登っては10分休憩のペースで登っていきます。

と、はっきりした下りになりました。 下りきったところが10時16分。 地図上のピークと書かれたところを通過したのでしょう。

次の徳右衛門岳手前に水場があります。 しかし、事前にネットで調べたところ、 ここの標識がわかりづらく、 水場もわかりにくいということは知っていた。

右側に踏み跡がないか、 標識を見落とさないか、 注意しながら登っていきます。

しか〜し、いつまでたっても標識が出てこないのである。
これは見逃したか・・・。
注意していたんだけどなあ。 まあこんなこともあろうと6リットル担いできたから、 なんとかなるとはいえ、 水場があったら浴びるほど飲んでやろうと思ってたのになあ。

岩なピークに出てきてしまいました。 時間的に徳右衛門岳でしょう。 水場は見逃してしました。 しかし、徳右衛門岳って標識もないのかなあ。

まあいっか。
1回下ってからまた登りはじめます。 しかし、徳右衛門岳に標識がないとはなあ。

ま、まさか?

水場は見逃したんではなくて、 まだ水場にたどり着いていないのでは・・・。

いやな予感がしますが、 コースタイムを上回って登ってきたはずだし、 淡々とペースを刻んできたはず。 大丈夫だよと自分にいい聞かせます。

2人めとのすれ違い。 その登山者からこのすぐ上が水場分岐だよ、 と教えられます・・・。

こんなに登ったのに水場にもついていなかったなんて・・・。

水場分岐には10時50分。 すでにコースタイムはオーバーしています。 体力的にはもちろん、 精神的にも疲れがどっと出ます。

なんとか思い直し、 ここでお昼ごはんにしよう。 水を補給しよう。 そう自分を奮い立たせます。

道は険しいらしいので、 袋にペットボトルを入れて両手をあけて水場方向に進みます。 斜面を落ちそうになるので生えている草をつかもうとしますが、 これが痛い草が多くて難儀します。 ズボンの上からでも刺さってきますので、 半ズボン不可の水場です。

で、途中まできますと、 踏み跡が消えます・・・。

ここを下りるのだろうか?
この先にトラバースするのだろうか?

トラバースの方にかけて少し進みますが、 滑って落ちてしまいそうでコワイです。

この先が水場とは限らないし
これは無理だ・・・。

最低限の水は持ってきています。 こんな人のいないところで事故るわけにはいきません。 引き返すことにします。

帰りも痛い草にやられながら戻ります。

水場分岐に戻ってきます。 思ったよりも登っていなかったうえに、 しんどいところで無駄に体力を使って、 しかも水も得られなかった。 なんということでしょう。

ボー然としながら湯を沸かして山菜おこわをつくります。 水は節約しないといけないので、 汁物はやめておきます。

が、汁物がないと口がパサパサして、 水を飲まなければいられません。

わー、また自分のバカバカバカバカ! 同じミスをまたしてしもた。 汁物やったら160ミリで済んだのに・・・。

しっかり標識のある徳右衛門岳は11時30分に通過。

ここらへんはもう本当にしんどくて、
なんでもっとトレーニングしておかなかったんだろう?
なんでこんなコースにしたんだろう?
なんで山小屋や水場があるコースにしなかったんだろう?
と後悔ばかりしていた。

コースタイムからも遅れ、 ネガティブなことばかり考えていた。

ところが地図上の「下降点森林限界」 と書かれたところにいきなり出た瞬間、 目の前がパッと開けたのだ!

蝙蝠だ!
めちゃくちゃカッコイイ山だ!

ウヒョー!!

このときの喜びをなんと表現したらいいんだろう。 ネガティブな気持ちは一気に吹っ飛んだ。

カッコイイ三角形の蝙蝠岳が目の前に。
ついに蝙蝠岳がボクの目の前に現れたのです。 荒川岳方向の展望も絶好です。 ついに登ってきたのです。

一気には登れなかったので 前から登山者がきたところで写真をとるフリをして休憩。 3人目となるすれ違いの登山者と話ます。

聞くところによると、 蝙蝠岳山頂直下に2張分くらいのスペースがあり、 そこがよさそうだとのこと。

この方は伝付(転付)峠から白峰南嶺を通って、 間ノ岳から熊ノ平を経てここを下りているとのこと。 すごい人だと思ったら、 すでに蝙蝠尾根を登って赤石までまわったこともあるとか。 こんなところにいる人はすごい人ですね。

そして山頂が1歩1歩近づいてくる。
13時49分、
ついについについに
蝙蝠岳の山頂に立ったのだ。
一気に力がぬけた。

足を動かしてさえいればいつかは着く。 今日ほどその言葉を実感したことはない。

登っているときは、 「南アルプスをなめてもらっては困る。 ちゃんと準備してから来い!」 と言われているような気がしていたが、 南アルプスは何も語らず、 ただ存在しているだけだった。

さきほどすれ違った登山者から聞いた 2張分のスペースはすぐにわかった。 もう今日は歩く必要もない。 ただ南アルプスの展望を心ゆくまで楽しんだ。

テントの中では暑すぎる。 水を節約するためハイマツの陰で のどが渇かないようにそっと過ごす。

水を飲まなくて済むようにしなくては。 そういやドライフルーツがあったな。 そうそうこれこれ。 カリフォルニアプルーン。

1個、口に放り込む。
が、水気は感じなかった・・・。
ドライフルーツだもんな・・・。
てか、余計にのど渇いたよ〜。

夕食は炊き込みおこわと、赤だし焼きナスみそ汁。 赤だし焼きナスみそ汁はめちゃうま〜。 からだに染み入る〜。

シュラフに入って ときどき起きては1口の水を噛むように飲んだが、 のどの渇きはおさまらない。 思い切ってゴクゴクッと飲んでやれ!
と飲んでやったが、ゴクゴクってことは2口である。

結局、水場についたら浴びるように飲んでやる!
とか、そんなことばかり考えて、 今日も眠れなかった。

●その2に続く●


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